多のう胞性卵巣症候群(PCOS)
2026.01.11
生理がこない、生理周期がバラバラ…。また月経不順があるなしにかかわらず、妊娠・出産が可能な時期の女性では、10〜15%の女性に多のう胞卵巣症候群(PCOS)を認めているといわれています。当院に生理不順で受診する方のおよそ4割以上の方に多のう胞性卵巣症候群(PCOS)が見つかっており、別の理由や、症状のない方の超音波(エコー)検査での検診の際にもよく見つかる疾患です。
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)とは
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)とは、多のう胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣から排卵が起こりにくくなるホルモンバランスのトラブルです。
正常な卵巣は毎月1個の卵胞が大きく育つのに対して、多のう胞性卵巣症候群は卵巣の中に小さな卵胞がたくさんでき、大きく育たずに排卵ができない状態です。
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)は、決してめずらしい病気ではなく、若い世代にも多い排卵障害のひとつです。
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多のう胞性卵巣症候群(PCOS)の主な症状
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)では、卵巣からの排卵がうまくいかないことがベースにあり、その結果としていくつかの症状が出てきます。
生理に関する症状
・生理の周期がバラバラ
・生理周期が長い
・月経なのか、そうでないのか、わからないような出血が度々ある。
からだ全体の変化
・顔や背中のニキビ
・毛深くなった
・体重が増えた
・血糖値が高めと指摘された
これらのすべての症状が出るわけではなく、全身の症状が出る方はあまり多くなく、むしろ、多くの方は月経関連のトラブルだけが発生します。また、同じような症状が出たからと言って多のう胞性卵巣症候群(PCOS)とは限りません。
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)の診断基準
日本産科婦人科学会では、2024年に多のう胞性卵巣症候群(PCOS)の診断基準を改訂しました。現在は次の「3つの条件」をすべて満たす場合に、PCOSと診断します。
①月経周期異常(生理不順)
生理が3か月以上こない(無月経)、生理の間隔が39日以上と長い周期が続く(希発月経)、排卵がうまく起こらず周期が乱れている(無排卵周期症)
②多のう胞卵巣またはAMH高値
多のう胞卵巣
超音波(エコー)検査にて、左右両方の卵巣に多数の小卵胞があり、2~9mmの卵胞が10個以上ある
AMH高値
血液検査にて、AMHの値を調べます。
20~29歳 4.4ng/mL以上
30~39歳 3.1ng/mL以上
③アンドロゲン過剰症またはLH高値
多毛や血液検査で総テストステロン(男性ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)を調べます。
総テストステロン
44ng/dL以上
LH高値
LH:7.1mlU/mL かつ LH/FSH比:1.21以上
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多のう胞性卵巣症候群(PCOS)の治療の考え方
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)は必ずしも治療が必要なわけではありません。
①治療が必要な状態か
3か月以内の周期で生理がある人は、ほとんどの場合で最低限女性を維持する女性ホルモン(エストラジオール)は十分出ているため、必ずしも治療は必要ではありません。3か月以上月経が来ない場合は、月経を起こすためのホルモン剤の使用が必要です。
②仕事や生活に支障があるか
生理周期がバラバラで乱れていても、生活に支障がない場合は治療は必要ありません。
仕事や学校、イベントのタイミングで月経がかぶってしまい困る
突然の生理で困る
生理や不正出血が長期間続いて、ナプキンをずっとつけている必要がある。
といった場合には、「低用量ピル」などのホルモン剤で人工的に生理を整えることは可能です。
ただし、ホルモン時あ服用を中止した場合は元の状態に戻ることが多いことには注意が必要です。根本的な体質は変わらないため、ピルによる月経不順の治療はあくまで対症療法という位置付けです。
③近いうちに妊娠を希望しているか
近いうちに妊娠を希望している場合は、低用量ピルを使用して排卵を止めるよりは、排卵をさせるようにしなければなりません。基礎体温を測り、自然排卵がしているかを確認して、もし自然排卵ができていなさそうと思われたなら、不妊治療を受けていただくことが望ましいです。
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)に関するよくある質問
多のう胞性卵巣症候群(PCOS)についてよくある質問をまとめました。
Q.痩せているのにPCOSってありますか?
A.あります。
PCOS=太っている人の病気というイメージがありますが、やせ型でもPCOSの方は少なくありません。
統計学的データではないですが、現場の診療において日本人の場合は太っている人は比較的少ない印象で、体重が標準〜やせ型でも、卵巣の状態やホルモンバランスにPCOSの特徴がみられることがあります。
Q.治療でピルを飲むと将来妊娠しにくくなりますか?
A.低用量ピルを飲んだからといって、将来妊娠しにくくなることはありません。
PCOSの方では、ピルで生理を整え、子宮内膜を守っておくことで、むしろ将来のトラブルを減らす効果も期待できます。
Q.多のう胞性卵巣症候群(PCOS)の原因はなんですか?
A.はっきりとした原因は分かっていません。体質と考えられています。よって、普段の生活において予防する方法はありませんが、もし肥満があるPCOSなら、体重減少によって症状の改善がみられる可能性があります。
Q.多のう胞性卵巣症候群(PCOS)による月経不順を放置しておくことで将来の妊娠に影響はしないですか?
A.確かに現時点では妊娠しにくい体質であると言えますが、月経不順を放置しておいても、ホルモン剤の治療をしても、将来における妊娠の可能性については、変わりません。つまり、今、ホルモン治療において月経不順を治しておくことによる、将来の妊娠機能の悪化の心配はありませんので、3か月以内の月経不順であれば治療せず放置しておいても特に問題はありません。
